ヤマト運輸と日本郵便の協業問題を深堀り

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中間決算で赤字に転落したヤマト運輸が、今度は昨年業務委託の締結をした日本郵便への小型荷物委託業務について停止を打診など、暗いニュースが続くヤマト運輸だが今回、日本郵便への業務委託停止に関する一部報道をヤマト運輸が否定するコメントを発表した、宅配大手2社の協業とその背景を深堀りしていく。

この記事で分かること

  • ヤマト運輸と日本郵便が協業した経緯
  • 協業の進捗
  • 委託契約終了した後のヤマト運輸の現状
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ヤマト運輸と日本郵便、協業の経緯

基本合意と輸送の詳細

2023年6月、ヤマト運輸のクロネコDM便とネコポスなど小型荷物を日本郵便に一本化、輸送の詳細は、集荷はヤマト運輸が行い、配達は日本郵便が行う協業として2025年3月を目処に完全移行を目指すとして合意

小型荷物を順次委託開始

2023年10月、ヤマト運輸の小型商品を一部の地域から順次移行を開始した

3万人の委託配達員と契約終了へ

2024年1月末を持ってクロネコネイトと呼ばれていた、主にDM便など投函業務を行っていたメイトとの契約終了、この時、労働組合が作られヤマト運輸に対する不当解雇を訴えるなど大きな騒動に発展した

合わせて、このクロネコメイトと呼ばれる人たちは朝、トラックに荷物を積み込む朝アシと呼ばれるパートも兼務している人が多く、流れとしては朝の5時から朝アシのパートに従事し、9時頃パートが終わると、業務委託者としてバイクや自転車でDM便の配達を請け負っている人が多く居たため、委託の契約終了に伴い、朝アシも退職、その後多くの営業所で朝アシ不足となり、ヤマト運輸はタイミーなどの、すき間バイトでその穴を埋めようとした、しかし単発、その日だけの新人とコミュニケーションが取れるはずもなく、積み込みの不備などで、ドライバーの配達に影響を及ぼしたり、因果関係は不明だがアイフォンの窃盗が急増するなど、別の問題も全国の現場で多く発生した

委託=DM配達ではなく、センターのアシスト業務も兼任していた人が多く、タイミーでその穴を埋めようとすること自体、経営陣の見通しの甘さが露呈し多くの問題が現場で発生

パパ
パパ

事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ

クロネコDM便改め、クロネコゆうメール全国開始

2024年1月末を持ってクロネコメイトとの契約を終了し、2月1日より集荷はヤマト運輸が行い、配達は日本郵便が行うクロネコゆうメールの集配業務が全国開始された

しかし、これまでヤマト運輸は自社集荷・自社配達を行っていた為、新書の取り扱いは法的に違反などは当然だが、DM便はダイレクトメール、つまり印刷物などが主な中身であって、実際の商品などをDM便で発送するのはNGなどの社内ルールはあったが自社集配ということもあり、そこまで細かい確認が行われる事も無かったが、配達するのが日本郵便となるとそうはいかない

事前に発送する物を一度ヤマト運輸へ渡し、それをヤマト運輸は日本郵便へサンプルチェックとして提出、日本郵便からOKが出て初めてヤマトへ集荷依頼が出来る仕組みや、ヤマト運輸から日本郵便へ持ち込まれる過程で透明な袋を使用するか袋の一部に切り込みを入れ、実際に送る中身の確認が日本郵便で出来る状態でなければ日本郵便への引き渡しが出来ないなど、これまでより厳しいルールが課せられる事となり、その不便さや業務量の増加で大多数の送り手が減ったことは容易に想像できる

パパ
パパ

発送のルールが増え、利用者の負担は増加

進まないネコポス改め、クロネコゆうパケットの完全委託

先述の通り、クロネコDM便に関しては完全移行を果たしたわけだが、当初の基本合意に盛り込まれているネコポスの完全移行が中々進まない2024年、その背景には、ネコポスはヤマト運輸の主力商品である宅急便と同レベルの品質が担保されていたが、クロネコゆうパケットになると全国でこれまでより1日遅延が発生する

それもそのはず、自社集荷・自社配達であれば、集荷した日に自社のネットワークに乗せ、その日の内に全国に輸送され翌日には注文者の元へと届く、しかし日本郵便が配達するとなると、日本郵便のネットワークに乗せる必要がある、つまりヤマト運輸のエリア毎に集まったクロネコゆうパケットを日本郵便へ持ち込む必要があり、そこが1日遅延の理由である

こんな事は基本合意の時点で分かりきっていた事であり、今回ヤマト運輸が業務委託停止の一部報道を否定し、品質の改善を打診したと発表されたが、遅延の理由が会社間の輸送であるにも関わらず、日本郵便へ品質の改善を求める事自体、筆者には理解出来ない

パパ
パパ

自社で集荷・配達する品質を維持する事は出来ない事くらいヤマト運輸も分かっていたはず

火のないところに煙は立たない

中間決算の赤字や2024年問題によるドライバーの残業問題、インボイスによるクロネコメイトの課税問題、日本郵便への委託費の重荷、日本郵便の収益拡大を期待していた反発など、業務委託停止の報道をヤマト運輸は否定したが、品質改善の打診よりしっくり来てしまう。

確かにヤマト運輸は品質に重きを置く、他社より運賃設定が高いのも宅急便の品質が担保されている証、それだけ品質に細かいヤマト運輸が会社間の移動で発生する小型商品の輸送品質低下を加味せず日本郵便と合意するだろうか

まとめ

今回の騒動は日本の宅配業大手2社による協業とその背景を筆者なりに深堀りして来たわけだが、協業自体は素晴らしい取り組みだと思う、年賀状もLINEで済ます時代になり、ハガキなどの投函商品は激減、そこに苦しむ日本郵便と、残業問題・インボイス問題など運ぶ「モノ」はあっても、運ぶ「ヒト」の問題に直面していたヤマト運輸、互いの痛い所を補う形で、ヤマトはこれまで獲得したニーズと集荷能力、日本郵便は二輪による圧倒的な配達能力を活かす協業であったことは間違いない

人口減少、更に働き手がどんどん減少している運輸業、大手2社が手を取り合い、これまで通り注文したら安心して届くのを待てる今の宅配業を支えているヤマト運輸と日本郵便に明るい未来が待っている事を願う


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